【元就奪還!竹中戦】
「案ずるな。すぐ戻る。元親にはそう伝えておけ」
でも、元就さんっ!
あいつはヤバそうですぜ!俺等が時間を稼ぎますから、その間に逃げ・・・
そう叫ぶ元親の子分その1の台詞を遮り、
「それで奴等が満足すると思うか?
もう一度言う。すぐ戻る。何の心配もいらぬ」
そう言い放ち、元就は一歩前に踏み出した。
そして射抜くように目の前の人物を睨みつける。
「話し合いは終わったかい、元就君?
さあ、僕と一緒に来てもらうよ。あの時の約束、ちゃんと覚えているよね?」
「当然だ。我が忘れるわけないだろう」
そしてそのまま、立ち竦む長曾我部軍を尻目に突然の強襲者、竹中半兵衛は
元就をつれて、瀬戸内に浮かぶ戦艦に行ってしまったのだった。
「んで・・・そのままあっさりと持って行かれちまったって事か!?」
いくら主の不在時だったとはいえ、情けなすぎる。
用事で領地を離れていたほんの隙に、先日苦労に苦労を重ねて手に入れた厳島の財宝が横から掻っ攫われてしまうとは。
ギリ、と爪を噛む。
元親の機嫌の悪い時の癖だった。
「お前等もお前等だ!なんで行かせたんだよ!」
突然の強襲とはいえ、長曾我部の軍は血の気の多い荒くれ者の集まりだった。
なのに、どうしてこんなにあっさりと宝が奪われてしまったのか。
「まぁ考えたって仕方ねぇ。奪われたもんは奪い返すっきゃねぇ・・・
野朗共!戦の準備だ!とろとろしてると取り返しがつかなくなるぞ!!」
深い深い暗闇の中。
「ねぇ、元親君のところ、楽しかった?」
「・・・・・・・」
そう言い、半兵衛は元就の唇をなぞる。
「君は僕から逃げられないよ?たとえ、何処にいても迎えに行くから・・・今日みたいにね」
指が口内に侵入する。
「だって君は僕のモノなんだから。君だってわかって・・・」
その瞬間に指に小さく痛みが走る。
指を引き抜くと、薄く歯型が指に刻まれている。
「随分、反抗的になったね。・・・あの鬼のせいかな」
「・・・・・・・・・・」
元就は一言も喋らない。
ただ射抜くように半兵衛を見上げるだけだった。
「これは・・・また躾直しかな?ねぇ元就君・・・?」
どさり、と元就の体が倒される。
暗闇の中に浮かぶ(と言っても大半は仮面によって隠されているが)その笑顔。
元就は嫌な顔だと思った。
目を背けようとしたらグッと顎を固定される。
自分と似たような細腕なのに何処か逃げられない力強さがある。
元就は心の中で舌打ちした。
「さあ、また躾てあげるからね?」
・
・
・
・
「ってな事になってたらぜってぇ許せねえーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!」
グワッ!と妄想の道から帰ってきた元親が叫びだす。
「ちょっと!さっきの全部アニキの妄想ッスか!」
「俺、正直ドキドキしちゃいましたよ!」
「続きは無いんスか!?」
など、背後で部下がなにやら叫んでいるがこの際、それは無視しておく。
「お前等!お宝は瀬戸内海の船の上だ!行く・・・」
「何をしている・・・?」
「行くぜ!」・・・とその台詞が最後まで出る事はなかった。
盛り上がる連中の後ろで冷水のような声がかかる。
「元就!?」
そこには最愛の人、元就がそれはもう元気に無事に突っ立っていた。
「無事だったのか元就!あの変態仮面に何かされなかったか!?」
「何も・・・というか貴様!我の友人を変態と呼ぶな!」
・・・・・友人?
背後に「?」を沢山飛ばす元親と愉快な手下共を見て、元就は気付いた。
こいつら、何か勘違いをしてないか?・・・と。
「竹中とはただ将棋の再戦の約束をしていただけだ。
わざわざこちらまで海を渡って迎えに来てくれたのだぞ?」
土産もくれたしな。と小脇にかかえた小箱を見せる。
箱には「豊臣印の桜餅 お土産にどうぞ★また遊びに来てね」と流暢な文字が書かれている。
「前回は我の勝ち。今回は残念ながら竹中の勝ち・・・一勝一敗。勝負は次回に持ち越しだ」
というわけで、また近いうちにあいつらまた来るぞ。
そう言い放ち、振り上げた拳の行く先を求めて悶絶する元親に先ほど貰った桜餅をひとつ押し付けた。
「美味いぞ。そなたも食べてみよ」
桜餅は何故かバナナと自分の涙の味がしたやらしないやら。
つかさらわれてないじゃん。
・・・次回はちゃんと伊達ちんにさらってもらうよorz
はんべとナリちゃんは将棋友達だよ!毎回いい勝負を展開してい様子。
はんなりって優雅な香りと鬼畜のニオイがするよNE!
