【兄貴と政宗と真剣勝負 勃発編】
じっとりと手に汗が滲む。
横には珍しく縋るような瞳で自分を見つめてくる元就。
手には安物のポケットティッシュが3個。
元親は深呼吸をした。
運を天に任せる。
・・・それ何て任天堂?いや、そんな事よりも。
元親は意を決っしてレバーを回す。
ガラガラと中で丸い物の転がる音。
(さあ、出て来い・・・!)
出て来い!いや、出て来てください!
マジでお願いしますよ!商店街お客様感謝キャンペーンくじ引き様!
頼むから1等コシヒカリ10kg当てて下さい、お願いします!!!
すでに3回、残念賞のティッシュが来た。
コロン・・・
どんなに願おうとも玉は無常に、そして無遠慮に出てくる。
出てきたのは光り輝く金色の色。
「・・・あれ?」
その瞬間、鐘の鳴る音と係員の叫び。
「おめでとうございまーーーーーす!!
特賞、1泊2日、温泉旅行ペアチケット当たりましたーーーーー!!!!」
騒然となる商店街。
「いやぁ、おめとうございます!」「ラッキーですね!」
降り注ぐ声援に埋もれながら元親は思った。
兄貴の執念、岩をも通・・・りこし、突き抜けてしまった様子。
「物凄いLuckだなぁ・・・」
俺もGoすりゃ良かったな、と政宗は旅行券の入った封筒でペラペラと扇ぐ。
行き先は四国讃岐の塩江温泉郷。
大自然に抱かれた山峡の宿である。ほっこりぬくぬく、いいところ。
「・・・で、これ2人分ですけど・・・誰が行くんですか?」
冷静に光秀が人数分の茶を入れながら呟いた。
「そりゃ俺だろ?だって俺が当てたんだし」
ずずっと身を乗り出し元親が主張すれば
「Wait!でもその福引券、溜め込んだの俺だぜ?」
異議あり!と政宗がつきつける。
ピシリと空気が凍る。
視線がぶつかり「邪魔すんなゴルァ!」と火花飛び散る応酬が見えた・・・ような気がする。
「では二人で行けばよいでないか?」
何を揉めている?と残念賞のティッシュを何故か揉みながら元就が首をかしげる。
「・・・・・・わかってませんね」
光秀がこっそりと呟いたが元就には聞こえていない。
その直後、元就が眼帯2人に「違うんだよ!!」と叫ばれ、
何か襲われている元就を助ける為に光秀は重い腰をあげた。
「まあ冷静に考えてみたら、元就殿は元親殿と一緒に居ないといけないじゃないですか」
ふぅ、と額の汗を拭き、光秀は2人を沈めた食器という名前の兵器を床に置く。
「あの寝相の事を忘れてませんか?」
寝ているうちに快適な場所を求め毎回毎回、元親の懐に潜り込んで来ては、
朝、何事も無かったかのように目覚めそのまま帰る。
寒い季節の元就の睡眠時の行動パターンだった。
無意識内で起こり、本人も自覚が無いという非常に困った症状は未だに改善されていない。
よってに元親と元就は離れる事が出来ない。
何せ離れていてもいつの間にか横にぴっとりと寄り添っているのだから。
冬だからぴっとり貼りついてくるんだぜ〜?と緩んだ顔でノロケ話をしては
政宗に殴られる事も少なくない。
「いや、それは大丈夫だと思う」
床に突っ伏していた政宗が起き上がって、真剣な眼差しを向けた。
「何ですか。まさか夜は寝かさないから、とか言うんじゃないでしょうね」
「・・・俺をそこのエロ親と一緒にすんなよ」
元親の背中がピクと動いた気がしたが政宗は気にせず続ける。
「快適な場所を探してんだろ?
じゃあ、元々の場所が快適なら問題ねぇわけだ。
HOTELだから空調管理も出来てるだろうし暑い寒いの問題もねぇ」
その言葉を聞いて、元親も蘇生する。
「ちょ・・・!待てよ!それって事は・・・じゃあ・・・」
「It
is the same.
同じだぜ?これで対等だ」
まるで自宅が快適ではないような言い草だが、そう言われればそうだと思う。
こうなったらきりが無い。
光秀は深くため息をついた後、無造作に巨大フォークで天井を突く。
「降りてきなさい」
数秒後、すっと天井の一部が開き、見知った忍が姿を現した。
「・・・光秀の旦那、何の御用時でしょうか・・・」
「今までの話、聞いていたんでしょう?」
「・・・ハイ、聞いていました。申し訳ありません・・・」
「なんで謝るんですか?」
どこか余所余所しい、を通り越して痛々しいその姿に眼帯2人は硬直する。
「まだ、あの惚れ薬事件の恐怖・・・抜けてねえんだな」
その呟きはどちらの眼帯が放ったものなのか。
そんな様子など始めから気にせず、光秀は懐から何かを取り出した。
茶封筒に入った2枚の騒動の元の旅行券。ご丁寧に「凄い景品」と書かれている。
それが佐助の手のひらに置かれた。
「制限時間は日没まで。
2人とも、彼からチケットを奪えた者が元就殿と一緒に行く、それでどうですか?」
とりあえず範囲は家の中で。
家具は壊したら後で直してもらいますからね。
そう言い渡して元就の手を引いてすたすたと歩いていく。
「ああ、それと・・・忍の貴方。
もし日没まで逃げ切れたらその2枚は差し上げましょう」
では、私達は巻き込まれないように逃げますから、後はよろしく。
ぱたん・・・
そう言って光秀はさっさと出て行ってしまった。
またやってしまった・・・
どうでもいいのをダラダラ続けるよ!(もうヤケ)
ちなみに福引でまわすガラガラいう奴の名前、誰か教えてくださいorz
