【元就の終わった恋心】
あらすじ(笑)
佐助に事実上婚姻を要求する元就。女体化にも賛成の様子。
自殺しかける政宗、そして下心を隠しつつ上手く事情を説明した兄貴。
・・・以上。
「とは言っても・・・どうやって助けるんだ?」
廊下で先程の湯飲みの破片を片付けながら政宗が小さく呟いた。
「どーせいい加減な薬なんだ。一日たてば治るだろ。
要はそれまでマチガイが起こらないようになんとか防ぐしかねぇ」
こぼれた茶を拭きながら元親もそれに続く。
ちらり、と視線を向ければ相変わらず元就は恋する乙女モード全開で
すでに寄り添う、どころかぺっとりと糊で引っ付いているみたいに佐助の腕から離れない。
普段の彼からは想像もつかない満面の笑顔で飽きもせずじっと佐助を見つめている。
熱い眼差しが居心地悪いのか佐助の視線が泳いでいる。
政宗は少々可哀想に思えてきた。
「とりあえず今は元就サンを満足させておくしかねぇってことか」
「下手に騒がれて、光秀にでも知られたら大変な事になるぞ。
オシオキと称して消しゴムにシャーペン突き刺して黒い点いっぱいつけるけじゃ飽き足らず
鉛筆ぶっさして中に芯を移植するくらいの事はあいつなら本気でするぞ!」
「・・・It
is
scary!そんでもってオシリペンペン、ボールペン!?」
「ちょっと!さっきから聞いてれば何言ってんの!いいから毛利の旦那をどうにかしてよ!」
いい加減、我慢の限界に来たのだろう。
珍しく大声で佐助が怒鳴ると、不意に今まで何をしても離れなかった元就の体温が消える。
「え!?」と慌てて振り向けばそこには大粒の涙を浮かべた元就の姿が。
「佐助は・・・我の事が嫌いなのか・・・」
「え、ちょっと?旦那・・・?」
「私の事が嫌いで、毎日毎日、回線切って首吊って死ねとか地方議員の選挙カーに轢かれて死ねとか
手と手の皺を合わせて幸せでない事に気付いて死ねとか日光で溶けて死ねとか思ってるのだな!?」
「ちょ・・・待っ・・・ねぇ、落ち着・・・ていうかどんな死に方なのさ!?」
「わかった・・・そなたがそんなに我の事が嫌いなら・・・死んで海に流れてくる!!」
そう叫んだと思うと脱兎の如く部屋から飛び出し、玄関まで駆け抜ける。
その後ろを「あっ!」「待て!」と鬼と竜が追いかけ、佐助は部屋に一人で取り残される事になった。
「え・・・?俺が悪いの?」
妙な罪悪感が残ったまま。
風が肌に突き刺さる。
風は少々冷たいくらいだが、このくらいで根をあげるほど薄い根性など持ち合わせていない。
光秀の鋭意な瞳が水面に浮かんだウキを凝視する。
ウキが水面より少しでも沈んだ瞬間に・・・
「今です!」
と、竿を引けば・・・
アジを 釣り上げた!さて、味は いかほどか?
カレイを 釣り上げたー!見た?見た? 華麗な竿さばき!
タコを 釣り上げた!これで もう おスミつき!
彼は海辺で延々と釣り師よろしく釣り糸を垂らしていた。
釣り上げた魚が水を求め跳ねる姿を恍惚とした表情で眺め、はっと我に返るとバケツに放り込む。
その繰り返しで早朝から今まで過ごしていた。
「ああ、いつかクリオネとか釣り上げてみたいですね・・・」
無茶苦茶な夢を語りながら、視線をまた水面に移そうとしたその瞬間。
視界の隅に見慣れた緑色が蠢いているのを確認した。
「元就殿?」
幾分やつれた様子で、とぼとぼと歩いている姿は少々異様に見える。
そのまま波打ち際に立ち、たった一言。
「こんな辛い恋なら死んだほうがマシだ・・・」
は!?
とりあえず光秀は自分の耳を疑った。
しかし、目の前の人物は遠慮のカケラもなく入水自殺に及ぼうとしている。
「ちょっとちょっと元就殿!何してんですか!!」
慌てて細い腕をつかんで引き止めれば
「実は・・・・・・・」
不安や悲しみに濡れた瞳が語りだす。
ゴガン!
何かモノの壊れる音。それと同時に折れる音やら水が零れる音、
とりあえず不吉な音がした。
「死んで詫びなさい」
バリン、と襖を破って乱入してきたのは光秀だった。
襖はすでに光秀ご愛用のと特大ナイフによって無残にも真っ二つに割れている。
先端が3つに別れた特大フォークを呆然と立ち竦む佐助に向けて・・・
「聞こえませんでしたか?死んで詫びなさい」
ザグッ!
畳に突き刺し規則正しく3つの穴を作る。
「私の可愛い元就を泣かせた罪は山よりも高く海よりも・・・伊豆小笠原海溝よりも深いのですよ」
突き刺さったフォークが畳をぐりぐりと抉る。
「貴方、私の可愛い元就を弄んだ挙句、孕ませ認知もせずそのままボロ雑巾のように
捨てたかと思うと暴言を吐き自殺まで強要するとはどういった了見ですか」
何故か物凄い内容に広がっている。
「まぁ、貴方にも言い分はあるでしょうから・・・選ばせてあげましょう。
・・・私の手にかかって死ぬか、自らで切腹するか」
「言い分あるのに聞いてくれないの!?」
聞く耳なんか、すでにありません。
態度がそう物語っている。
光秀は懐から一本の小刀を取り出し、戦慄いてる佐助の目の前に差し出した。
(これで・・・腹を切れって事・・・!?)
「武士の情けです。介錯はしてあげましょう・・・」
首筋にぴったりと当てられる鋭い刃(でもフォーク)
『忍なら弱音を吐く前に力尽きて死ね!』
忍としての師匠の言葉が頭を過ぎる。
何かみっともない死に方だけど、ごめんなさい、真田の旦那、武田の大将。
真田の旦那、俺がいなくてもちゃんとご飯食べるんだよ。お腹出して寝ちゃいけないよ。
これから誰が晴れの日に旦那の布団干すんだろう・・・
「無視ですか?うふふ・・・いい度胸してますね・・・」
いい加減、我慢の限界に達したのか首筋の刃物が肉を斬り、骨を絶とうとしたその時。
「光秀殿、待ってくれ!」
私の大事な人を殺さないで!
そう言わんばかりに佐助を庇うように間に入り込もうとする。
「どう思われようと、佐助は我の大切な人だ!
たとえ光秀殿でも・・・佐助に危害を加えようとするのであれば
我はそなたと戦わなければならない!!」
ああ、もうここらが潮時だ。
「ああ、ああわかったよ旦那・・・じゃない、元就!日輪の良く当たる崖に白い一軒家建てて
ペットに兎いっぱい飼って、子供も野球チーム補欠込みで作れるくらいいっぱい作ろうね!」
もうヤケだ!俺の人生、最後まで誰かに操作されっぱなし!と自暴自棄で佐助は叫んだ。
華奢で今にも折れそうな体を愛しむように抱きしめると・・・
「・・・痛いから放せ」
いつもの口調の元就が物凄く迷惑そうな顔で眉間に皺をよせている。
「あ・・・あれ・・・?」
その後ろから
「元就サン!元に戻ったのか!!」
「薬の効き目、切れたんだな!!」
飛び出した元就を追ったものの、見つからず途方にくれていた眼帯二人の歓声が聞こえてくる。
やーやー、よかった。一時はどうなる事かと。
まぁ、元に戻って一件落着だよな!
肩の荷がおりた油断からか元親はもう一人の存在に気付いていない。
「薬の効き目?・・・元に戻った?・・・どういうことなのですか?」
「あ?・・・・・みつひ・・・で?」
「これは興味深い・・・是非とも・・・詳しくお聞かせ願いますか、元親殿?」
どす黒いオーラが光秀の周りを取り囲む。
「嘘は・・・為になりませんよ・・・?」
冷や汗ダラダラの元親に襲い掛かる二つの巨大食器。
「毛利の旦那!見ちゃ駄目!!」
「!?」
それが振り下ろされるその前に佐助が元就の目を塞いだ。
その後、またまたまた臨死体験をした元親があの世で光秀似の閻魔大王に
因縁つけまくって再び蘇生する話があるが、それはまた別の話。
数日後。
政宗の手元には例の桃色の液体が。
それを手の中で弄びつつ、近くにいるであろう愛しい人に聞こえるようにこう叫んだ。
「come
on,元就サン!美味いリンゴ貰ったから、兎さんの形に切ってやったぜ!!」
ぱたぱたと廊下から聞こえる足音に政宗が黒く微笑んだ。
(どうせまたろくな事にしかならないだろうけど)
・・・・・長々とやってこれだけですか、お腹切腹!!
3日に渡って地味に続いていたアホ話完結です。もう後編、とっとと終わらせたかったの丸見えですねv(逝)
いいの・・・うさ大好き+暴走元就と傷心政宗が書けたから・・・('A`)
しかし、なんだか兄貴が暴れないとやり遂げた気になりません(重症)
